米動画配信大手ネットフリックスが1/21に発表した2024年10-12月期決算は、売上高が前年同期比で16%増、純利益は約2倍と好調でした。昨年11月に配信された元ヘビー級王者マイク・タイソンのボクシング戦が推定で1億800万人が視聴されるなど、特にスポーツ中継が好評で、会員数は3億人を突破。
同社も一時期は会員数が伸び悩み、広告付きのリーズナブルな視聴コースも提供することになりましたが、足元では北米地域で値上げをするなどしており、優良なコンテンツを有料で視聴者に提供するのが、創業以来の基本姿勢です。
一方で日本では、フジテレビが元SMAPの中居正広さんの問題で、深刻なスポンサー離れに直面しています。日本のテレビ局(地上波)のビジネスモデルは、視聴者は無料で、運営費はスポンサーの広告費で賄われるかたちになっていますので、今回トヨタや花王やサントリーなど50社超がCMを差し止める事態は同社の存続さえも危ういものにしています。
「有料だけど手間暇かけて面白いコンテンツを提供しようとする会社」と「無料だけどスポンサーに忖度しながら低予算でコンテンツを提供しようとする会社」の足元の業績は対照的です。これが一時的な現象なのか、大きな時代の転換点と捉えるかは、考え方によって異なるかと思いますが、個人的には大きな時代の転換点を象徴するコントラストに映ります。
今回のブログのテーマは「無料と有料」ですが、世の中にほんとうの意味での無料サービスなどは存在しません。どこかで課金しなければ事業を継続できませんから・・・。これは極めて常識的な考え方だと思うのですが、実際の世の中では無料サービスなるものが大いに幅を利かせているように見えます。
私たちは嬉々として、グーグルやフェイスブックのSNSや検索エンジンを無料で使っています。しかし実は無料に見せかけて、個人情報を広告主に提供することを目的としたバーター取引に利用されているとも言えますし、証券業界で流行の手数料ゼロの施策なども、サービス提供者側から見ると、個人情報収集のためのマーケティング費用と割り切ってのことだと思います。
「タダほど怖いものはない」
人生において、このことは肝に銘じておいた方がよいと思います。無料に見えて、実は何か大切なものを支払っている可能性が高い。そう考えることは、繰り返しになりますが極めて常識的な考え方だと思います。
「フジテレビが視聴者と広告主のどちらを重視するか?」その答えは言うまでもありません。お金を払ってくれない視聴者に、営利企業が継続的に良いサービス(コンテンツ)を提供するモチベーションが湧いてくるはずもありません。
インターネットが普及した2000年代以降、多くの企業が値下げや無料サービス、またポイント付与でお得感を出して大量集客して、個人情報を利益に変換する広告モデルやその他の利益率の高いサービスに誘導したりする戦略に走ってきました。
しかしこれからはネットフリックス型の会社が増えてくるのではないでしょうか。それは良いコンテンツや製品を創って、それを評価してしっかりお金を支払ってくれる限定された優良顧客に対して、より良いサービスを提供するスタンスの会社です。
コロナ後の世界的なインフレで人件費や原材料が高くなり、企業サイドも値上げをしなくては生き残れない状況です。一方で品質が悪いのに値上げをすれば消費者が受け入れるはずもありませんので、必然的に各企業は量(売上)より質(利益)にフォーカスしていかなければならなくなるでしょう。
ビッグデータ(量)をお金に変える錬金術師(大型テック企業)の時代から、テクノロジーを駆使しながら各分野でサービスの質にこだわる中小・ベンチャー企業の時代が到来する。期待も込めて、そう予感する今日この頃です。