ファンドアナリストとして運用会社のセミナーに参加する機会が増えていて、最近感じることがあります。それは、欧米の運用会社の拠点が各国の一番人口の多い大都市に偏ることなく、地方都市にも点在していることです。
例えば、アメリカでは、キャピタル- LA, フィデリティ- ボストン, アライアンスバーンスタイン- ナッシュビル, ハリスアソシエイツ- シカゴ, インベスコ- アトランタ etc.
ヨーロッパでは、アリアンツ- ミュンヘン, ベイリーギフォード- エジンバラ, ピクテ- ジュネーブetc.
※日本国内で残高の多いアクティブファンドを運用する、代表的な運用会社を列挙しました。
いずれも、各国人口No.1都市ではありません。
特に、アメリカは連邦国家という性質上、地域によるカルチャーが全く異なります。私の好きなHip-Hopも地域によって独自の発展を見せていますが、こと運用会社の領域でも、著名な会社が全然違う場所に点在していることが面白いなあと感じています。
一方で、日本の場合はどうでしょうか?
お気づきの通り、運用会社の本社は100%東京にあります(笑)
しかも、千代田区と港区でほぼ全てが揃ってしまうでしょう、、、
ご存じない方も多いとは思いますが、実は「東京」は、世界最大の人口を誇る都市(東京、埼玉、神奈川、千葉の周辺人口を含んだ首都圏で集計)です。ニューヨークや上海よりも全然人口が多いのです。
しかし、人口が地方と比較した際に突出して多いから、運用会社も東京一か所に集中しているというわけではないでしょう。
日本の運用会社が東京に一極集中している理由には、日本の運用会社のほとんどが、大手メガバンク、証券会社、保険会社傘下のグループ会社である経緯があります。
運用会社の独立性はほとんど存在せず、親会社の意向によって商品や運用の内容が決められるというのが通例でした。
しかし、欧米の運用会社は異なります。資産運用のみを生業とし、独立性を守りながら、本業の運用でしっかりとリターンを出してきた会社が名を馳せてきた事例が多いです。
運用会社は長期的なリターンを重視する性質上、日夜情報が飛び交う金融街から、むしろ一定の距離を取ることにより、各地方でそれぞれの投資哲学を養ってきた歴史があります。
運用会社の東京一極集中の問題点としては、プロダクトや運用に関する“活きた”情報が全て、東京でしか得られない点もあげられます。
確かに、運用会社の定量的な情報をインターネットで取得することは容易になりましたが、
ファンドマネージャーやストラテジストから得ることができる“活きた”定性的な情報は、対面でしか得ることができないと私は思います。
日本では、銀行や証券会社の本部を通じて、実際の営業員の教育や研修を行うことが一般的ですが、欧米では、地方の運用会社が独自のプログラムを通じて、地元のファイナンシャルアドバイザーに直接教育することもあるようです。
去年から日本政府が掲げている資産運用立国の構想では、「資産運用特区」に選定された地域において、運用会社は税制や行政サービスの優遇を受けることができます。既に、同構想には札幌市、大阪市、福岡市が名乗りを上げており、国内でも運用会社の地方分散の機運が、徐々に高まりつつあります。
実際全国による所得格差はあるものの、家計における投資比率は、3大都市圏とそれ以外、西日本と東日本といった具合に、明確に地域差が存在する状況です。
まだ名乗りこそ上げていませんが、いつか私の地元仙台でも、有望な運用会社とともに地元に洗練された運用サービスを届けられたらいいなあと、密かに野望を抱いています、、、
■地方に立地する米英の資産運用会社- 野村資本市場研究所
http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2015/2015win03.pdf
■金融庁、「資産運用特区」選定へ 地公体から募集開始- 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB169XQ0W4A110C2000000/
■【都道府県ランキング】株式投資をやっている⼈、2位は和歌山、3位は東京 意外なトップは?- かぶまど
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