マーケットレビュー(2019年7-9月)

2019.10.16(WED)

【全体観および私見】



201979月期の「世界の社会・経済・金融市場」を振り返ります。
資産運用の観点から、この四半期で最も大きなニュースは7/31に米国で10年ぶりに利下げが行われたことだと思います。ちなみに9/18にもFRB2度目の利下げを断行しました(各0.25%×2回=0.5%)。

日欧の長期金利がすでにマイナスゾーンに突入するなか、経済状況が比較的良好である米国が利下げに動いたことで、高格付けの債券の金利は消滅しかかっていると言っても過言ではないでしょう。
安全資産の金利がゼロ以下の金融環境は、金融業、資産運用業に大きなインパクトを与え、今後のビジネスモデルの大転換が余儀なくされていることを示唆していると捉えられます。
実体経済面では6月の大阪サミットで行われた米中首脳会談を機に再開された貿易協議が不調に終わり、8月に入ってすぐにトランプ米大統領は「対中制裁第4弾」を発表しました。
これで米国への中国からの輸入品ほぼ全てに高関税が課せられ、平均20%を超える水準に達することになりました。

米中貿易戦争が始まって1年が過ぎますが、それまで米国における中国製品への平均関税率が約3%くらいだったことを考えると、多くのグローバル企業がサプライチェーンの見直しをし始めたのも当然です。

また米中貿易戦争は当初、中国の景気後退につながり、その他の国・地域に波及していきましたが、とうとう米国経済にも(特に製造業を中心に)影を落とし始めており、今後の世界経済の不安材料となっています。
結果として、7-9月の株式市場は金融緩和(株式市場にプラス)と景気減速(株式市場にマイナス)の綱引きで、ほぼ横ばいとなりました。

このように何となく不安になってしまう国際政治やマクロ経済の現状ではありますが、そこだけに目を取られていては投資機会を逃してしまうことになりかねないことに、私たち長期投資家は留意しておかなければなりません。

実際、世界経済の事実(FACT)に目を向けてみると、成長の芽はあちらこちらで静かに着実に育ってきているよと感じます。

昨今の不安定な世界情勢の中、長期投資家は今一度、そのことをしっかり理解しておかなければならないのだと思います。



20197月-9月の注目ニュース】

7/3  NYダウ平均が9ヵ月ぶりに史上最高値を更新。
7/5 景気減速下の利下げ期待(金融相場)で、英独仏の株価指数が年初来高値を更新。
7/17 米主要500社の46月期の純利益は3%減の見通し(2期連続減益)。
7/18 米中貿易摩擦から約1年、世界主要企業は生産拠点を中国外に移す動きを加速させる。
7/19 米マイクロソフトの46月期決算はクラウド好調で純利益49%増(過去最高)。
7/19  M&Aに絡む損失が2018年度は世界で約1550億ドルと前年比で66%増加。
7/19  G7財務相・中銀総裁会議はデジタル通貨リブラに対して最高水準の規制を要求。
7/21 世界全体でATMが減少、キャッシュレス決済が急速に普及。
7/21 仮想通貨の流出被害が止まらない。今年13月世界で約12億ドルの被害。
7/22 参議院選挙の議席確定。与党は改選過半数63を上回る71議席(改憲2/3には届かず)。
7/31 世界でマイナス金利の債券が残高ベースで13兆ドル(1年前比で倍増)。
7/31 FRB10年ぶりに利下げ(0.25%引き下げ年2%~2.25%)を実施。
8/2  就活情報「リクナビ」が学生の同意を得ず「内定辞退予測」を販売していたことが判明。
8/2  トランプ米大統領が「対中制裁第4弾」を発表(7月末の閣僚協議が不調に終わる)。
8/5  週明けのNYダウは767ドル安と今年最大の下げ、世界同時株安。
8/12 ESGROEから持続的に収益をあげる企業を算定すると欧米勢が8割を占める。
8/13 中国の人民武装警察部隊が香港との境界に集結(デモ激化)。
8/16  メルカリ疲れ(ネット疲れ)でブックオフ(リアル店舗)が復調の動き。
8/19 米欧の労働市場でも日本と同様の人手不足の様相。省力化ニーズは拡大。
8/20 米国の設備投資が減速、6月コア資本財の受注は24ヵ月ぶりにゼロ成長。
8/20  中国が測位衛星(位置情報サービスに活用)の数で米国を上回ってきた。
8/24  かんぽ不正問題で、郵政3社の時価総額が201512月のピーク比で半減。
8/26 アフリカで起業熱高まる(一気に技術革新が進むリープフロッグ現象を伴う)。
8/28 5年に一度の年金財政検証が行われ、年金額の所得代替率が確実に低下する将来像が示される。
8/31  米ネット通販業界でアマゾンに挑む個性的な新興企業群が台頭。
9/1  米トランプ政権は1日、中国製品への制裁関税第4弾を発動(関税率は平均20%を超える)。
9/2  環境規制・ESG投資への対応で、航空機・船舶の電動化の動きが世界で進みつつある。
9/10  米中貿易戦争を横目に、米大手運用会社の中国進出が止まらない。
9/10  米トランプ大統領が強硬派のボルトン大統領補佐官を解任。
9/13  欧州中央銀行が3年半ぶりに金融緩和に踏み切る(201812月に量的緩和終了)。
9/13  大手食品・化粧品メーカーが通販サイトを介さず、ネットでの直販を模索し始めている。
9/14  サウジアラビアの油田が無人機による攻撃を受け生産が日量570万バレル減少。
9/16  中国のスマホ決済額が年間3000兆円近くに拡大(日本は2018年度1.1兆円)。
9/16  米国シェアオフィス「ウィーカンパニー」のIPO延期、ユニコーン熱狂に転機。
9/17  企業価値の源泉は有形資産(人、モノ)から無形資産(知識)へ(約8割が無形資産)。
9/18  日立はIOT事業(ルマーダ)の世界展開のため新会社を米国に設立。
9/18  米FRB7月に続き、0.25%の利下げ(→年1.75%~2%)に踏み切る。
9/21  ロボアドバイザー大手のお金のデザインが独立系金融アドバイザー(IFA)を支援。
9/26  日米、貿易協定で合意(農産品や米国牛肉の関税はTPP水準、車の追加関税回避)。
9/27  米議会下院はトランプ大統領のウクライナ疑惑に関し国務長官を召喚(弾劾調査)。



【金融市場動向(2019年7-9月)】

世界の長期金利
6月末
9月末
3ヵ月変化
日本10年国債
-0.17%
-0.22%
-0.05%
米国10年国債
2.00%
1.66%
-0.34%
ドイツ10年国債
-0.33%
-0.57%
-0.24%
英国10年国債
0.82%
0.48%
-0.34%
国内株式
6月末
9月末
3ヵ月変化
日経平均株価
21275.92
21755.84
2.3%
TOPIX
1551.14
1587.80
2.4%
ジャスダック平均
3405.61
3379.39
-0.8%
東証REIT指数
1938.82
2177.18
12.3%
海外先進国株式
6月末
9月末
3ヵ月変化
NYダウ30種
26599.96
26916.83
1.2%
S&P500
2,941.76
2976.74
1.2%
ナスダック
8006.24
7999.34
-0.1%
FTSE100
7,425.63
7408.21
-0.2%
DAX
12,398.80
12428.08
0.2%
香港ハンセン
28542.62
26092.27
-8.6%
海外新興国株式
6月末
9月末
3ヵ月変化
上海総合
2978.88
2905.19
-2.5%
インドSENSEX
39,394.64
38667.33
-1.8%
ブラジルボベスパ
100,967.20
104745.32
3.7%
ロシアRTS
1,380.52
1333.91
-3.4%
商品
6月末
9月末
3ヵ月変化
原油WTI(ドル)
58.47
54.07
-7.5%
NY金(ドル)
1409.7
1465.7
4.0%
CRB指数(ドル)
181.04
173.94
-3.9%
為替
6月末
9月末
3ヵ月変化
米ドル/
107.81
108.10
0.3%
ユーロ/
122.59
117.81
-3.9%
英ポンド/
136.91
132.89
-2.9%
豪ドル/
75.70
72.95
-3.6%
NZドル/
72.40
67.73
-6.5%
カナダドル/
82.32
81.60
-0.9%
スイスフラン/
110.46
108.27
-2.0%
南アランド/
7.66
7.14
-6.7%

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