解放から制限へ

2024.03.30(SAT)

全米7割の州で、子どものSNS利用を規制する流れが起きています。フロリダ州では、14歳未満の子どもがSNSアカウントを持つことを禁止させ、ユタ州では18歳未満の子どもがSNSアカウントを作成する際に、保護者の同意が必要とのことです。


こうして驚くのも、私が親に携帯(パカパカ開くやつ)を買ってもらったのはちょうど14歳の頃でした。当時SNSと呼べるサービスは存在せず、もっぱら掲示板やブログがネット上で匿名の人間同士がコミュニケーションを取れる場所でした。掲示板には、”2ちゃんねる”のような大きいサイトから、かの悪名高い”学校裏サイト”と呼ばれる、特定の学校の生徒が匿名で陰口をたたき合う小さいサイトまで、有象無象が乱立していたのが当時の実情です。


今でも私の出身中学を検索すると、ちょうど私が中1の頃ですが、上級生が学校裏サイトで誹謗中傷を行い、結果いじめられた生徒が他の中学校に転校することになった、悲惨な事件の報道記事が出てきます。ネット中傷の加害者側は、家裁に送られることとなりました。当時、河北新報(宮城県の地方紙)の1面を堂々と飾り、全校集会がいくども開かれたことを鮮明に覚えています。


そんなインターネット修羅の思春期を駆け抜け、高校に上がる頃には、SNSでツイッターやインスタが登場し、SNSは今や私たちの生活に欠かせない存在となりました。


ふと、最近の子たちのSNS活用状況が気になり、私の奥さん(同い年)の年の離れた妹の学生時代の話を聞いてみたくなりました。2010年代に中学生になった子は、身近なコミュニケーションツールにいきなりLINEが登場します。LINEはメールの進化版といった印象を持つかもしれませんが、グループ機能がある点が全く異なります。それによって、自分はあのグループに誘われていないだとか、LINEグループ内で、特定の誰かを晒上げるような中傷をしたりと、私が知らないところで、中学生のLINE利用におけるトラブルが多発しているのが実態です。


そんな状況の中、奥さんの妹は、母親の意向もあり、スマホは持っているがLINEは高校生まで使用できなかったようです。しかも、クラスの半数以上はそういった状況だったというので、驚きです。このお陰もあってか、彼女たちは余計なトラブルに巻き込まれることもなく、むしろ自分の好きなことを謳歌できたらしく、この方針は奥さんから見ても高評価でした。


冒頭の話に戻りますが、便利なサービスだからといって、何でも分け与えればいいのではないという話だと思います。SNSの活用については国内においても、むしろ中学・高校教育の領域の方がよく考えられているような気がします。私たちが特にメリットだと感じていた、他人と境目なくシームレスにコミュニケーションを取れるというネットの性質が、大きく見直されつつあることを象徴しているでしょう。


経済や社会の動向を見ても、モノやサービスの貿易、移民等、“グローバリズム”の旗のもと、それらを自由に行ってきた結果について検証され、制限をかけることによって自国の文化や経済を尊重する流れが起きています。


ティーンのSNSの代表であるTik Tokは、運営が中国企業ということもあり、情報セキュリティの観点から米国での使用が禁止になりそうです。しかし、アメリカに合わせて日本が禁止するか?と言われると、中国との関係性や、エンターテイメントの消費行動における影響力を考えると難しいかもしれません。


こうした動きは、資産運用における私たちのマーケティングにも大きな示唆を与えてくれます。ネット証券が先頭に立ち、SNSを活用したマスマーケティングによって情勢されたものこそが、現在の「NISAはオルカンかS&P500にクレカ積立、それ以外は邪道!」といった雰囲気だと思います。もちろん、この投資スタイルも一つの考え方ではありますが、この方法がすべての人に当てはまるとは限りませんし、重要なポイントは、彼らのほとんどがその内容や仕組みを十分に理解していないことでしょう。


マスマーケティングを突き進めていくと、結論としては、遍くすべての人間が理解しやすいメリットを強調して訴求することになります。全世界または全米は経済成長を続けていく、積立でリスク軽減、クレカでポイントが付くといった内容は、誰でもキャッチーで理解しやすいです。しかし、インデックス投資による特定の地域への偏り、下落局面における下げ幅や、そして、重要な出口戦略については全く議論されていません。


“最高品質の資産管理サービス”をうたい、人数の限られた状況で営業活動を行っていく私たちにとっては、便利なネットは活用しつつも、むしろ上手く制限をかけた、ある意味で閉ざされたマーケティング活動が重要になってくると思っています。4月から当社で本格的に始めていく企業型DCのマーケティングにおいても、こうした考え方を取り入れたいと思っていますので、これから随時考え方について皆さまに共有できればと思っています。


IFAという小規模な組織にとどまらず、運用会社のような大企業においても、今後こうした制限付きのマーケティングが効果を発揮してくると思います。今月の私の活動を振り返ると、3月8日に行った三菱UFJアセットマネジメントと共同で行ったアクティブファンドのセミナーが良い事例だと思いました。同ファンドは、IFAを中心に対面の領域で残高が拡大しているファンドです。運用状況や、ファンドの特徴や、今の環境下での強み等、さまざまな角度からプロダクトの良さを共有できました。


今や三菱UFJアセットマネジメントは、資産運用を始めようと思った人間はその名前を避けては通れないほど人気のインデックスファンドのマーケティングに成功しましたが、実は、アクティブファンドの領域でも実績のあるファンドを運用しています。もちろん、彼らの強みを生かした最終顧客向けのWEBマーケティングを活用する選択肢もあるかと思いますが、今回は同ファンドを実際に顧客に提供し、その良さを理解しているアドバイザーに焦点を当てたセミナーを開催することができました。同ファンドの販売会社には、全国に支店を持つ銀行や証券も名を連ねますが、あえて、私たちのような独立系アドバイザーにスポットを当てて開催することによって、従来のセミナーよりも深い話をすることが出来たと思っています。


外からやってきたビッグウェーブには乗らず、私たちを中心とした強いうねりを生み出していきます。

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