ロサンゼルス・ドジャース大谷選手の元通訳、水原一平氏の違法賭博のニュースが世間を騒がせています。「何がほんとうなのか?」まだ真実はわかりませんが、野球ファンの私としては、残念すぎる悲しすぎるニュースです。一方ファイナンシャルアドバイザーとしては、不謹慎ながら、全く別の視点でこの事件を観ています。
最悪シナリオとしては、野球選手としての大谷さんの経済価値が、水原氏の違法賭博で棄損される事態が考えられます。「人的資産と金融資産のバランスの良い運用がより良い人生に繋がる」という当社の資産運用コンセプトに照らし合わせると、今回の件は「とてもバランスが悪かった」としか言いようがありません。もしも大谷さんに専門性が高く信頼できるファイナンシャルアドバイザーが付いていれば、未然に防止策を提示できた可能性もあったように思います。
一般的にスポーツ選手は、人的資産の運用期間が短く(選手生命が短い)、セカンドキャリアをどうするかといった問題に加え、現役時代に稼いだお金のマネジメントをどうするかといった問題に直面します。
しかし有名が故に、胡散臭い人も含めて「お金の相談相手と称する人」が群がってくるケースが多く、またその状況自体に対する不信感から、誰にも相談できずに、自己流で資産運用をする人たちも多いように感じます。そして残念ながら、、金融経済の常識的な知識やリスクとリターンのバランス感覚の欠如から「必ず儲かる資産運用」とか「絶対お得な節税方法」に引っ掛かり、詐欺まがいの事件に巻き込まれる人も多く見受けられます。
金融資産の運用(投資)では「成功するではなく、失敗しないにフォーカスする」ことが大切だと、私は考えています。逆に人的資産の運用(仕事)は、失敗しないではなく、成功するにフォーカスしなければ、業界で生き残ることができないと思います。個人的には、どちらの資産運用も戦略は異なれど、長期視点でバランス良くやっていきたいという気持ちが年々強くなっています。
しかしながら近年は、突出した個性とか、非常識な発想とか、破壊的イノベーションとかを声高に掲げる人たち、またはそのような考え方がリスペクトされ、バランスが良いとか常識的であるといった概念は、古臭くカッコ悪いことになってしまった感があります。
特に1990年以降、戦後の高度経済成長モデルが崩壊して、古いシステムから新たなシステムに変化すべき時期を逸し続けた結果、長期の経済停滞を招いた日本が(および日本人が)、シリコンバレー的な価値観に基づく米国経済の力強い成長に、憧れやリスペクトの気持ちを持つのも無理はありません。
もちろん私にもそのような気持ちがあります。ただ同時に行き過ぎた賞賛や否定は不健全だとも思っています。過去の成功体験が未来も必ず続くといった思い込みや、逆に過去の成功体験を全部壊さなければならないといった極端な考え方にも賛同できません。
過去の歴史に学びながら、未来を見据えて、目の前の仕事を日々改善していく。そんな心構えであったり、自分の人生で本当の満足や成功に至るには、おそらく長い時間がかかるだろうし、良い時も悪い時もあることを覚悟する。そんな常識的かつバランスのとれた考え方に沿って生きることが大切なのだと思います。
最近、例えば「新NISAは絶対やるべき!」とか逆に「新NISAには絶対手を出すな!」とか、インターネットを通じて資産運用の専門家を称する評論家がポジショントークを繰り広げていますが、正直くだらないなーと思って見ています。
過去から培われてきた金融市場の原理原則をベースに、実体経済で起きているイノベーションも考慮した上での、バランスの良いアドバイス、常識的なアドバイスこそが、真に豊かな人生に繋がる資産運用の知恵であり知見だと思うのですが・・・。おそらくインターネットの世界で注目を浴びるには、全然インパクトが足りないのでしょうねー。残念です(苦笑)。