2024年3月の金融経済動向(中浜の視点)

2024.04.08(MON)

2024年3月の最大注目点は日米欧の金融政策決定会合でした。特に日本で「17年ぶりの利上げがあるか否か?」「あった場合に世界の金融市場に与える影響は?」この2点はグローバル投資家の関心事だったと思います。しかしながら事前に3月利上げ(マイナス金利解除)が日経新聞等で報道され(リーク?)、当日の利上げ決定時に大きなサプライズはありませんでした。

為替市場では大きく円高に振れることも危惧されていましたが、日銀の利上げを急がない姿勢、逆に米国では粘着質なインフレで金利低下が事前予想よりも進まないという観測が台頭。為替市場では151円97銭まで円安が進捗しました。財務省からは為替介入も辞さないという発言もあり、今後の為替市場は高ボラティリティが予想されますが、長期投資の収益の源泉は「投資先企業の付加価値(利益)の成長」であることを忘れずに、短期的な為替市場の動きに惑わされないことが重要です。

欧州では、スイス中銀が0.25%の利下げを実施。米国ほど経済状況が良くないユーロ圏はインフレ率の低下と共に、近い時期に利下げモードに入ってきそうです。欧州株式の堅調さは今後の利下げを見越した動きだと感じます。

一方で米国株式市場に目を移すと、2023年10-12月決算発表が終わり、S&P500のEPS成長率は前年同期比で約+9%となりました。この数字は2024年1-3月にS&P500が約10%上昇した理由を業績面から正当化していると言えるでしょう。しかし相対的にPERが過去の上限20倍近辺に位置しており、今後の上昇にはさらなる業績拡大が必須となります。

そんな状況下、昨年来相場を牽引してきたマグニフィセント7(GAFAM+テスラ+エヌビディア)の一部に陰りが見えてきました。EV需要の減退でテスラが、独占禁止法や生成AIへの取り組みへの遅れでアップルの株価が下落しています。

逆にAI向け半導体関連株式には投資資金が集中しています。「AIには巨額の予算と大規模なデータセットが必要で、それが可能な最大手企業だけに圧倒的な巨利をもたらす可能性がある」と米スタンフォード大学教授のエリック・ブリニョルフソン教授は指摘しています。日経の永井洋一氏は、AIセクターが他のセクターの資金需要を締め出す「クラウディングアウト」を引き起こしており、それがAI関連以外の株式の低迷を招いている要因になっていると推測しています。

「AIは人々の生活を全体的に豊かにするのか?」

株式市場の動きは、今のところ一部の会社・人にしかメリットはないことを示唆するような動きですが、これは初動段階の動きと捉え、今後の拡がりに期待したいと思います。

2024年1-3月期、新NISAも始まり日本株式市場は大幅な上昇しました。海外株式市場も中国を除き米国を中心に堅調。円安もあって日本の投資家の運用成績も極めて好調だったかと思います。しかし一極集中の相場が長期間続かないことは歴史が証明しています。質が高いαへの幅広い分散、株式と債券の資産クラス分散、このことを改めて意識していきたい局面ですね。

【2024年3月の注目ニュースと金融市場の動き】

3/1 米ナスダック2年3か月ぶりに最高値更新、一方で中国の2月景況感は5カ月連続50を下回る
3/1 NewsPicksは報道機関に著作権侵害を謝罪(コンテンツはタダではない時代)
3/5 4日、日経平均が初の4万円台(今年の上昇率は20%と世界で突出、海外勢牽引)
3/5 日米ハイテク株に資金集中(業績堅調も一部集中や投資初心者の参入などITバブル時と類似)
3/6 iPhoneの中国売上が急減速(年初からの6週、前年同期比24%減少、ファーウェイとの競争激化)
3/6 三井住友トラストAMがマグニフィセント7に「等金額投資」するファンドを設定
3/7 米経営者の自社株売りが増加(メタやアマゾンの創業者が大規模売却:相場の天井か?)
3/7 バイデン米大統領が一般教書演説をおこなう(大企業・富裕層増税を訴え、対トランプ鮮明に)
3/8 日銀の中川審議委員がマイナス金利解除を意識させる発言(3月解除をにらみ円高株安に)
3/9 米雇用2月は27.5万人増加(市場予想20万人を超えるも、時給の伸びは予想を下回る)
3/11 AIへの資本集中加速によって他のセクターの資本需要が締め出されている可能性が大(AI不況?)
3/12 日米金融政策決定会合を控え、円高・株安が進捗(1ドル146円台、日経平均は一時1100円安超)
3/14 米アマゾンが米製薬大手イーライ・リリーの肥満症薬を自宅に配達するサービスを開始
3/14 米2月CPIは前年同月比+3.2%(予想+3.1%)、粘着インフレ警戒で米長期金利に上昇圧力
3/14 独VW、EV失速で利益率が低下(欧州にエンジン車回帰の動きも)
3/16 シリコンバレー銀行破綻から1年経過も米銀の信用リスクに懸念(高金利・不動産市況悪化)
3/17 2023年10-12月期S&P500のEPSは前年同期+8.9%
3/19 米アップルのティム・クックCEOは経営方針を急展開し、生成AIに注力すると発言
3/20 世界PEファンドが保有する企業数が28000社と過去最高、売却先が見つからないケース増加
3/20 日銀は19日の金融政策決定会合でマイナス金利を解除(-0.1%→0~0.1%)、17年ぶり利上げ
3/20 日銀の低金利がしばらく続くとの見方から長期金利が低下、東証REIT指数が前日比3%の大幅高
3/20 米FRBは5会合連続の金利据え置き決定(年5.25%~5.5%)今後の年3回の利下げ見通し変えず
3/22 スイス中銀0.25%利下げ、英中銀は5回連続金利据え置き
3/22 米司法省はアップルを反トラスト法(独占禁止法)に違反した疑いで提訴(国家対GAFAの構図)
3/22 日本の2月消費者物価指数は前年同月比+2.8%(4カ月ぶりに伸び率拡大)
3/25 厚生労働省はiDeCoに掛け金を出せる期間を現状の65歳から70歳に引き上げる(掛金拠出5年延長)
3/26 上場企業の配当と自社株買いを合わせた株主還元総額が今期過去最高の25兆円に
3/28 円安が34年ぶりの水準に(1ドル151円97銭)
3/28 米アップル、最強銘柄に陰り(iPhoneは不調、生成AIで出遅れ、独禁法違反も逆風)
3/29 日銀意見公表「金利正常化はゆっくり着実に」、今後円安が波乱要因に?

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