木を見てから森を見る

2024.04.24(WED)

「木を見て森を見ず」これは物事の細部(木)にとらわれて、全体(森)が見えていない状況を表す有名な格言です。私も仕事柄、物事を俯瞰して見ることを意識して「木を見て森を見ず」の状態に陥らないよう気をつけています。

しかし一方で、この格言は「木を見なくていい」と言っているわけではありません。残念ながら21世紀に入ってからは「森を見て木を見ない企業群」が世界経済を独占しつつあります。インターネット上のビッグデータを様々な方法で莫大な利益に変える錬金術師。その代表がGAFA【グーグル、アップル、フェイスブック(現メタ)、アマゾン】と呼ばれる米国の4大テック企業(巨大プラットフォーマー)だと私は捉えています。

GAFAは破壊的イノベーションによって、利便性が高く、自由で新たな世界(価値観)を創造したリスペクトすべき企業群である一方で、現在、4社とも反トラスト法違反(独占禁止法)の疑いで、米国司法省に提訴されています。

グーグルは検索エンジンや広告で、アップルはスマートフォンで、フェイスブック(現メタ)はSNSで、アマゾンはEコマースで、不正に競争相手を排除して公正な競争を阻害したり、個人のプライバシーを危険に晒している疑いがあると、多くの人々が認識しています。

GAFAから見ると、すべての人やその行動履歴は0と1の組み合わせ(デジタル化)で表現できるものであり、そのビジネス圏の拡大と共に、顧客や取引先や競合相手や社会全体に対する配慮が欠けていったような印象を受けます。

「眩い光と深い闇」は概ねセットなので、仕方がない面もあると思いますが、どうやらGAFAの経済支配は来るところまで来ており、森だけを見て木を見ようとしない姿勢に対して、個々の小さな木たちが怒り始めているのだと思います。

しかしこれはGAFAに限ったことではありません。我が国の金融サービスの未来も、デジタル化、データドリブン経営、なんちゃら経済圏、ロボアドバイザー、AIなどなど、進歩的なワードばかりが目立っており、森の分析ばかりに忙しく、個々の木(お客さま)とじっくり向き合って資産形成や資産運用をサポートする覚悟を持った金融機関がどれくらいあるのか?正直かなり危機感を感じています。

個人的にはこれからのテクノロジーの進歩は、個々の木(お客様)の育成をサポートする「支援型サービスの実現」に活用されなければならないという想いが強くあります。

「木を見てから森を見る」

個々の木をしっかり保全することで、森全体も健全に保全されると信じて、トップダウンアプローチではなくボトムアップアプローチの考え方で、バリューマネジメントは進んでいきたいと思っております。

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