マーケットレビュー(2018年8月)

2018.09.06(THU)

まもなくリーマンショック(2018915日)から10年を迎えます。
 「あの頃、皆さんはどのような状況でしたか?」

私はバリューマネジメントを創業して約2年が経過(40歳)。事業も少し軌道に乗り始めた頃でしたが、リーマンショックで状況は一変しました。このことがその後の私の仕事や人生に及ぼした影響は、かなり大きなものとなりました。

お客様にも多大なご心配をおかけした時期でした。

当時の記憶を思い返すと、投資信託の平均下落率は、リーマンショックを起点に1年以内に4割~5割に達し、経済環境も最悪で、先行きが全く見えない状況でした。雇用環境も悪化し、当時の就活生はとんでもない苦労をしていたことを思い出します。10年後の現在の人手不足の様相を誰が想像したでしょうか?

その後、各国政府の積極財政政策と中央銀行の金融緩和政策もあって、ギリシャ危機、超円高、東日本大震災等の逆風を受けながらも、日本でもアベノミクス等の効果もあって、徐々に金融市場も実体経済も回復していきました。

その結果、リーマンショックの寸前に運悪く投資を始めた人も、当初投資金額は45年後に投資元本を回復し、10年後の現在は1.5倍以上に増加しています。

100年に一度と言われた経済危機においても、10年単位の長期投資の有効性は実証されたのです。おそらく、これからの10年についても、様々な社会・経済・市場の変化の波を受けながら「長期投資という戦略の有効性」は証明されていくでしょう。

ただそのためには、良い金融商品を、自分に合った良いかたちで保有しなくてはならなくてはなりません。弊社はより良いかたちで、それをサポートしていきたいと思っております。兎にも角にもリーマンショックから10年、改めて身が引き締まる想いです。

【マーケットコメント】

先月の実体経済および金融市場で起きた出来事を振り返り、個人的な見解等を述べてみます。

まず8月最初に注目したのが米国アップル社の決算。同社の4-6月期決算は過去最高益となり、時価総額は史上初の1兆ドル超えとなりました。その後アマゾンドットコムがこの1兆$クラブの仲間入りとなりましたが、おそらく次はグーグル(アルファベット)とマイクロソフトでしょう。とにかくこの4社の時価総額の増加額は凄まじく、過熱感も感じますが、ITバブル時と異なり、事業の実態を伴っているだけに、現在の株価水準については専門家の意見もわかれるところです。

次に米国長期金利についてです。前半に米国経済の強さを反映して1ヵ月半ぶりに10年国債の金利が3%台に乗せてきましたが、後半にはFRB議長が米国にインフレの兆候は見られないという発言をして、先行きの利上げの打ち止め感から、結局、米国10年国債利回りは3%を割れとなりました。このことが米国株式市場にとってポジティブに受け止められ、株式市場の上昇を後押ししました。

8月は世界各国の企業の4-6月期決算の数字も確定しました。米国企業は24%増益、その他地域(日欧アジア)についても概ね10%~20%の増益率となり、足元の企業業績がかなり堅調であることが確認されたのです。

そして先月の最大注目点はトルコショックでしょう。米国人牧師の拘束を巡る外交問題がきっかけとなり米国とトルコとの関係が悪化。米国はトルコに経済制裁を発動し、810日にトルコリラは1日で20%下落しました。その後、現在もトルコリラの下落に歯止めはかからず、その他の新興国通貨にも、その流れが波及し、新興国通貨全体が対米ドルで大幅に売られています。

また米中貿易戦争も収まる様子がなく、人民元の下落と共に株式市場(中国上海指数)も、20158月の人民元ショック時の水準まで下落しています。貿易戦争に影響が少ないと思われたIT大手テンセントも、当局からの規制(指導)によって、ゲーム事業が不調となり、4-6月期決算が最終減益となりました。人気オンラインゲーム「モンスターハンター」が発売5日で配信停止。このことはテンセントショックと呼ばれ、ゲーム業界全体に悪影響を及ぼしています。

日本経済もグローバルな貿易戦争やそれに伴う金融市場の変調の影響を受けています。人民元安によって中国人旅行客の増加ペースに減速感が見られ、今後も一時的かもしれませんが、日本への旅行客の数および消費額の減少が予想されます。この影響でいわゆるインバウンド銘柄は大きく下落、またこれらの様々なリスク要因の増大が、投資家心理に影を落とし、IPO(新規公開株)やマザーズなどの小型株市場は、一時期のバブル的様相が弾けた感じになっています。直近マザーズに上場したメルカリの株価が大きく下落している影響も波及しているのではないでしょうか。

最後になりますが全体的に見ると、やはり8月末現在、経済も金融も米国の独り勝ち状態と言えます。しかもその中でアップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフトの4社は突き抜けており、米国株式市場の上昇分の大半を占めています。投資資金の一極集中とそれ以外に割安な銘柄が続出している状況は、表面的には2000年初頭のITバブル時を彷彿させます。あの時に割安株への投資はその後大きな財産となりましたが、今回はどうなるでしょうか?

「歴史は繰り返すが、決して同じかたちでは繰り返さない。」そのようにも言われますが、本源的価値を有しながらも割安になっている株式が、そろそろ出始めている。個人的には、そんな感じも受ける今日この頃です。

【金融市場の動き】

(8月末の長期金利) 

FRB議長のインフレ兆候見られない発言で米国金利は低下。トルコショックによる欧州経済の先行不安でドイツ金利も低下。一方日本は日銀が0.2%程度までの長期金利上昇容認。

世界の長期金利
8月末
前月比
昨年末比
日本10年国債
0.11%
0.05%
0.07%
米国10年国債
2.86%
-0.10%
0.46%
ドイツ10年国債
0.34%
-0.11%
-0.09%
英国10年国債
1.44%
0.11%
0.26%

(8月末の日本株式)
材料難で動きが乏しく横ばい。

国内株式
8月末
前月比
昨年末比
日経平均株価
22865.15
1.4%
0.4%
TOPIX
1735.35
-1.0%
-4.5%
ジャスダック平均
3823.35
0.1%
-3.2%
東証REIT指数
1752.65
-0.9%
5.4%

(8月末の先進国株式)
米国の一人勝ち状態。トルコショックの影響で欧州株式市場は下落。

海外先進国株式
8月末
前月比
昨年末比
NYダウ工業30種
25964.82
2.2%
5.0%
S&P500
2901.52
3.0%
8.5%
ナスダック
8109.54
5.7%
17.5%
FTSE100
7432.42
-4.1%
-3.3%
DAX
12364.06
-3.4%
-4.3%
香港ハンセン
27888.55
-2.4%
-6.8%

(8月末の新興国株式) 
トルコショックの影響で新興国は再度大幅に売られる。インドのみ堅調。

海外新興国株式
8月末
前月比
昨年末比
上海総合
2725.25
-5.3%
-17.6%
インドSENSEX
38645.07
2.8%
13.5%
ブラジルボベスパ
76677.53
-3.2%
0.4%
ロシアRTS
1092.29
-6.9%
-5.4%

(8月末の商品市況) 
金が1年ぶりの安値圏。安全資産としての魅力が薄れているかも。

商品
8月末
前月比
昨年末比
原油WTI先物(ドル)
69.8
1.5%
15.5%
NY金先物(ドル)
1200.3
-1.9%
-6.3%
CRB指数(ドル)
192.96
-0.8%
0.3%

(8月末の為替市場)  黒字は円安、-赤字は円高
新興国通貨、資源国通貨が暴落。
(トルコリラとアルゼンチンペソは対米ドルで年初から半値水準まで下落)

為替
8月末
前月比
昨年末比
米ドル/
111.09
-0.7%
-1.4%
ユーロ/
128.94
-1.5%
-4.6%
英ポンド/
143.99
-1.9%
-5.4%
豪ドル/
79.85
-3.9%
-9.2%
NZドル/
73.50
-3.6%
-8.0%
カナダドル/
85.12
-0.9%
-5.0%
スイスフラン/
114.63
1.5%
-0.9%
南アランド/
7.56
-10.3%
-17.3%

以上

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