2025年6月の金融経済動向(中浜の視点)

2025.07.08(TUE)

2025年6月、MSCI世界株式指数が4カ月ぶりに高値を更新しました。年初から株価が冴えなかった米国大型テック株(特にAI・半導体)が世界株式市場を牽引。日経平均が6.6%上昇したのに対しTOPIXが1.8%の上昇に止まったことも、半導体関連株の急反発を物語っているようです。

米国一国集中から地域分散の流れに乗って、年初から大きく上昇していた欧州株は一服。

為替市場では主要通貨の中で米ドル安の傾向が続いています。日本円もユーロやスイスフランに対して弱く、円安トレンドが終わったとは言えない状況です。各国の10年国債利回りの水準は月間では横這いでしたが、米国では7月4日のトランプ減税による財政悪化が懸念されており、長期金利の上昇圧力は増しています。

欧州が利下げを実施した中で、日米の中央銀行が金利据え置きを決めたにも関わらず、ユーロやスイスフランが買われる為替市場の状況から「金利と為替の相関関係」が薄まった印象を受けた月でもありました。

以上、全体的に(投資家にとって)6月の金融市場(特に株式)の状況は悪くありませんでした。4月の急落局面から、5月に続いて回復局面を力強く継続した良い月だったとも言えます。

しかしその背景にある国際政治・世界経済・金融政策をみると決して油断できない状況が続いています。先月はイスラエルとイランの戦争に米国が介入して中東で戦火が急拡大するリスクが高まりました。経済面から言うと原油価格が急騰して世界中をスタグフレーションに陥るリスクです。米国の仲介で停戦したことによって、とりあえずマーケットも落ち着きを取り戻しましたが、今後も何が起こるかはわかりません。

米国ではトランプ大統領がFRBの金融政策に介入しようとしていますし、実体経済面での関税政策についても他国と妥協するつもりは一切なさそうです。世界経済は完全にグローバル化からブロック化に舵をきったように見えます。

このトレンドは一過性のものではなく、今後長く続くことを前提に、運用戦略を考えなくてはならないと個人的には思っています。それは米国一極集中を色濃く反映した大型インデックス投資より、相対的に各地域で活躍する「中小型銘柄も含めたグローバル分散&アクティブ投資戦略」だと考えます。

【2025年6月の注目ニュース】

6/3 米国30年債利回りが一時5%台に(米国債のCDSはイタリアやギリシャと同程度)
6/4 トランプ米政権が、鉄鋼・アルミニウムの関税を25%から50%に引き上げ
6/5 2024年の日本の出生数は前年比5.7%減の68万6061人(初の70万人割れ)
6/5 EU域内の輸出割合が多い東欧株が上昇(トランプ関税の影響軽微)
6/6 米ドル安でアジア新興国の利下げ余地が拡大(インドやフィリピンも利下げへ)
6/6 証券会社の口座乗っ取りによる不正売買が止まらず(1カ月で2000億円増加し5200億円に拡大)
6/6 欧州中銀0.25%の利下げ実施(7会合連続の利下げで政策金利は2%)
6/7 東証REIT指数が8カ月ぶりの高値(賃料上昇・関税耐性が追い風に)
6/7 世界の富裕層に国外脱出の動き(特に強権政治に米国や増税実施の英国で顕著)
6/12 米国の原油生産が5年ぶりに減産の可能性(価格軟調でトランプ氏増産要請に応えらえず)
6/13 イスラエルがイランを攻撃(首都テヘランや核関連施設を標的に)
6/14 日本製鉄のUSスチール買収が成立、完全子会社化へ(米政府に黄金株付与)
6/14 中国のレアアースの輸出規制が日本車生産に打撃(中国頼み限界か)
6/14 13日、年金制度改革法案が成立(基礎年金の底上げについては5年後に判断)
6/17 日銀は政策金利を0.5%の据え置き(国債買い入れの減額ペースは緩和の公算)
6/17 日本の株式市場で中小型株に脚光が当たり始める(経営者の世代交代で変化の兆し)
6/19 18日、FRBは政策金利の据え置きを決定(4会合連続で政策金利4.25%~4.5%)
6/20 日本の5月消費者物価指数は前年同月比+3.7%(コメ価格が2倍超)
6/20 外国為替市場で北東欧通貨の上昇目立つ(米依存低く分散投資先として選好)
6/20 スイス中銀が0.25%の利下げを実施(政策金利は0%)
6/21 日経コラム「円安局面は終わってない」、対日直接投資の少なさを危惧
6/23 米国がイランの核施設を空爆(中東、衝突拡大の恐れ)
6/24 イスラエルとイランが停戦合意(トランプ氏が投稿)
6/26 NATO(北大西洋条約機構)加盟国はトランプ氏の国防費GDP比5%要求を受け入れへ
6/27 欧州のESGファンドで初めて資金の流出が流入を上回った(2025年1~3月)
6/27 トランプ米政権が「報復税:内国歳入法899条」の新設を検討(外資の投資収益に課税)
6/27 ベッセント米財務長官が「報復税899条」の撤回を議会に要請(議会は即日受け入れ)
6/28 米S&P500指数とナスダック指数が過去最高値更新(関税交渉の進展と中東リスク後退)
6/28 MSCI世界株式指数(現地通貨建て)が4カ月ぶりの最高値更新(米国AI関連に資金が再流入)
6/28 米政府がカナダとの通商交渉を停止(米テックへのデジタル税に反発)

【世界投資地図(過去3カ月および年初来騰落率)】

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