2018年7月は西日本豪雨、記録的猛暑、通常ルートを逆走する台風等によって、日本各地で大きな被害がでました。このような異例とも言える天変地異は、人心を不安にさせ、景気を悪化させる要因になることもあるので、資産運用の面でも十分注意しておく必要があります。
ただ注意しすぎるあまり、(長期投資家の行動として)やってはならないのは、不安心理が高まり投資マインドが減退する時期に、感情に流され投資を止めてしまうことです。
仮に今後、景気が悪化する局面が来たとしても、そこは一時的な我慢の時期ですし、実は景気低迷期に上昇する投資対象も結構ありますので、思考停止するのではなく、資産配分や銘柄選択の微調整で対応することが肝要です。
全体的な雰囲気に流され、資産運用の意志決定を短絡的に行ってはなりません。特に中核(コア)資産は、状況が厳しい時でも保有を継続することが重要だということを、世界貿易戦争等で不確実性が高まっている今のような時期にこそ、再認識しておきたいと思います。
また個人的かつパーソナルファイナンスの観点から、特に今は健康管理に気をつけなければならないと思っております。記録的な猛暑日が続く中、自分が思っている以上に疲れが蓄積されている可能性があります。
兎にも角にも、最近の外部環境の様々な変化(異変)が、個々人の「人的資産や金融資産」にどのような影響を及ぼしているのか?今一度、立ち止まって現状確認をしつつ、長期視点で「これから」について再考する時期ではないかと感じる今日この頃です。
【マーケットコメント】
2018年7月、世界貿易戦争への楽観的な見通しが強まったこと、また米国の4-6月GDPが+4.1%と高成長を遂げたことから、米国株式を中心(NYダウは月間+4.7%)に世界株式市場は上昇しました。
先月の重要ポイントは7月6日、米中が互いの輸入品目に340億ドルの関税をかけあったところです。これは米中貿易戦争の最初の一手(お互いにとって)ですが、マーケットは不思議なもので、先行き不安が事実になったことで逆に悪材料出尽くし感から落ち着きを取り戻したのです。
続いて7月25日、米国とEUの間で「工業製品(自動車を除く)の関税撤廃」及び「米国の対EU輸出拡大に関する貿易交渉開始」についての合意がありました。こちらは素直にグッドニュース、世界株式市場の上昇を後押ししたと言えるでしょう。
しかしながら今後、11月の中間選挙を意識しているトランプ大統領が、貿易戦争に関してどのような動きを見せるかは全く予断を許しません。
よって先月の株式市場の上昇を手放して喜んでいる投資家は皆無だと思います。7月末に株式市場の上値が重たくなってきた状況を見ても「まだまだ不透明な状況が続いている。」というのがマーケットコンセンサスだというのは明確です。。
一方、日本国内では久しぶりに日銀の金融政策が話題となりました。ゼロ金利政策が始まり約2年半、当局はデフレ脱却のため、長短金利をゼロ近辺でコントロールしてきたわけですが、先月(7月30日~31日)の日銀金融決定会合で変化の兆しが見え始めました。
決定会合で日銀は物価見通しを下げた(2018年1.3%→1.1%、2019年1.8%→1.5%)にも関わらず、0%程度に誘導していた長期金利(10年国債利回り)について、0.2%程度までの上振れを容認したのです。
世界的にも長期金利は上昇基調にあり、おそらく米国では堅調な経済を背景に10年国債利回りが3%台に定着するのも時間の問題かと思います。
このような世界的な金利上昇は、経済や金融に一時的な痛みを与える一方で、資産運用サイドから見ると、そこに新たな投資機会を見出すこともできるというものです。
資産運用においては、ある一つの事象が及ぼす影響について、「表側と裏側」をしっかり見ていかなくてはなりません。それができる運用チーム(アドバイザーや運用会社)は数少ないと感じますが、そんな運用チームを味方にすることができるなら、投資家は短期的な変動に惑わされず「長期的な安心」と「長期的な運用実績」の両立が可能になるでしょう。
【金融市場の動き】
(7月末の長期金利)
先進国の景気の強さを背景に、金利上昇圧力が強まっている。
日本10年国債 0.06% 前月比 +0.03% 昨年末比 +0.02%
米国10年国債 2.96% 前月比 +0.10% 昨年末比 +0.56%
ドイツ10年国債 0.45% 前月比 +0.15% 昨年末比 +0.02%
英国10年国債 1.33% 前月比 +0.15% 昨年末比 +0.10%
(7月末の先進国株式)
貿易戦争への楽観見通しから、先進国株式は全体的に上昇。
東証株価指数 1753.29 前月比+1.3% 昨年末比-3.5%
米国S&P500 2816.29 前月比+3.6% 昨年末比+5.3%
米国ナスダック
7671.79 前月比+2.2% 昨年末比+11.1%
ドイツDAX 12805.50
前月比+4.1% 昨年末比-0.9%
英国FTSE100 7748.76 前月比+1.5% 昨年末比+0.8%
(7月末の新興国株式)
貿易戦争への楽観見通しから、新興国にも買い戻しが入る。
中国上海総合 2876.40 前月比+1.0% 昨年末比-13.0%
インドSENSEX 37606.58 前月比+6.2% 昨年末比+10.4%
ブラジルボベスパ 79220.43 前月比+8.9%
昨年末比+3.7%
ロシアRTS 1173.06
前月比+1.6% 昨年末比+1.6%
(7月末の商品市況)
米国の原油備蓄放出観測から原油安、「米国金利上昇=ドル高」から金は下落。
WTI原油先物(1バレル) 68.76ドル 前月比-7.3% 昨年末比+13.8%
NY金先物(1オンス) 1223.70ドル 前月比-2.5% 昨年末比-6.3%
(7月末の為替市場) ※ +は円安 -は円高
世界的なリスクオフの緩和で、総じて小幅な円安が進捗。
米ドル/円 111.84円 前月比+1.0% 昨年末比-0.8%
ユーロ/円 130.84円 前月比+1.2% 昨年末比-3.2%
英ポンド/円 146.82円 前月比+0.5% 昨年末比-3.5%
豪ドル/円 83.11円 前月比+1.4% 昨年末比-5.5%
以上