レジリエンス

2024.07.26(FRI)

昨日(2024年7月25日)、日経平均株価は前日比1285円34銭安の3万7869円51銭と急落しました。前日のNY市場で大型テック株を中心にナスダック市場が3%超下落したこと、加えて為替市場で日銀の利上げが意識され152円台まで急速な円高が進行したことが主な要因です(直近で円は対ドルで10円ほど円高に)。

今年上半期、大型テックのマグニフィセント7が相場全体を牽引し、米国を中心に世界株式市場も上昇していましたが、7月13日のトランプ氏の銃撃事件とその後のバイデン米大統領の選挙戦撤退を機に、マーケットは急速にリスクオフに転換した模様です。

現在の状況は2016年に似ているように感じます。この年は6月に英国のEU離脱、11月に米国でトランプ大統領誕生するなど政治不安の高まりを機にマーケットは短期的に大きく下落しました。2016年に限らず政情不安、戦争、震災、疫病などは社会や経済に大きな不安をもたらし、そのたびに私たちの投資ポートフォリオも大きな影響を受けてきました。しかし長期的には「投資先企業の事業の成長」と共に、複利効果を伴って大きな経済価値を生み出してきました。

バリューマネジメントが構築する投資ポートフォリオでは、「レジリエンス(resilience)」を強く意識しています。レジリエンスという言葉をインターネット等で調べると、概ね下記のような説明がされています。

レジリエンス(resilience)とは「回復力」「復元力」「耐久力」「再起力」「弾力」などと訳される言葉で、「困難をしなやかに乗り越え回復する力(精神的回復力)」として、ビジネスの現場でも注目が集まっています。元々は、物理学の分野で「外から加えられた力によって変形した物質や物体が、どのくらい元に戻ろうとするか(跳ね返す力)」を表すものでした。なお、レジリエンスの対義語は「脆弱性 (Vulnerability:バルネラビリティ)」です。脆弱性はセキュリティの用語としてもよく使用されますが、その場合の対義語は「堅牢性(Robustness:ロバストネス)」となります。

上記が一般的に用いられるレジリエンスの定義ですが、資産運用においてレジリエンスを有するとはどういうことか?それを私なりに解釈すると、マーケット変動(外からの力)の影響は受けるが、利益成長という内なる力を有しており、外部からの変動をしなやかに受け止めながら、その後しっかり回復していくことができる「投資ポートフォリオ」を持つことと捉えています。

人間の体でも膝や肘が柔軟に曲がることで外部からの圧力を柔軟に吸収しています。長期投資とは膝の屈伸を伴って高い山を登っていく登山のようなものとイメージすることもできます。

要するに上下変動を過度に避けるのではなく、しなやかに受け止める弾力性が重要だと考えます。例えば地震が起きた時に建物が揺れなければ、建物の内部構造はその時は大丈夫でも、大きな負荷が蓄積され徐々に耐震性を失い、次の地震で崩壊してしまう可能性が高くなってしまいます。例えば最近問題になった仕組債などは、それに近い脆弱な構造の金融商品のような気がします。

長期投資においては、なるべく脆弱性を排除していく必要性がありますが、過度に堅牢性(ロバストネス)を求めるのではなく、20%くらいの上下変動を許容して、柔軟に吸収しながら長期のリターンを目指すマインドセットも必要かもしれません。

また資産運用に限らず、人生全般においてもレジリエンスを意識していきたいと個人的には思っています。

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