日経新聞2017年6月2日 「日銀総資産500兆円を超える~GDP並みに膨張~」
同年6月8日 「日本1~3月期GDPは1.0%増に下方修正~在庫圧縮加速が原因~」
GDPは一国の経済規模を示す代表的な経済指標ですが、以上のように様々な経済関連記事に最も頻繁に登場するといっても過言ではありません。
このGDPを深く知ることは、経済を観る眼を養うことにつながると同時に、
長期投資への理解度をより深めることに役立ちますので、
私の視点から、2回シリーズでGDPについて解説してみたいと思います。
【第一回】
GDP(Gross Domestic Product)=国内総生産
国内で一定期間に生み出された「付加価値の総額」
=国内で一定期間に生産された「最終財・サービスの総額」
※一定期間は1年とか四半期(3ヶ月)
GDP(国内総生産)はその名のとおり、「国内で生産されたものの総額」。
生産という言葉から、目に見える「モノ」のイメージが先行しますが、医療・介護・娯楽等の「サービス」も全て含まれます。一方で主婦の家事や地下経済の取引(麻薬・売春等)は含まれません(この2つを並べ論じるのも大変申し訳ないですが…)。
ということは、良いか悪いかは別にして、家事や介護を家庭でやるのでなく、業者に委託すればGDPの数値は大きくなるということになります。
ところで日本のGDP(1年間の生産総額)は現在、約530兆円。
当然、GDPの中には「様々な財やサービス」があるわけですが、
私はそれを「パン」に集約することでGDPを簡潔に説明することがあります。
皆さんも親戚の中学生や高校生にGDPを教えるような時があれば是非、この手法をご活用ください(笑)。
ここで1兆円=パン1個に換算します。大変高価なパンです(笑)。
日本は年間にパンを約530個生産できる国です。生産規模は世界第3位になります。
世界一の経済規模を誇る米国のGDPは日本の約4倍=パン約2100個、
世界第二位の中国のGDPは日本の約3倍=約1500個。
(私的には、日本500個、米国2000個、中国1500個くらいまで単純化して捉えています。)
ここで少し話を戻しますが、冒頭GDPは「付加価値の総額=最終財・サービスの総額」と記載しておりますが、この意味について、パンの製造工程を例に解説したいと思います。
【パンの製造工程】↓
① 種苗会社が農家に10円で小麦の種を売る。
(付加価値10円)
② 農家は小麦の種を10円で買い、小麦を育て30円で製粉会社に売る。
(付加価値20円)
③ 製粉会社は30円で仕入れた小麦を、小麦粉にして50円でパン屋に売る。
(付加価値20円)
④ パン屋は50円で仕入れた小麦粉からパンを作り、最終消費者に100円で売る。
(付加価値50円)
パンの製造工程(中間財・サービス)で発生した付加価値の合計は100円となり、それは最終消費財のパンの価格100円と等しくなります。
要するに最終財・サービスの合計を計算すると、一国の年間の付加価値総額を捉えることができるということです(中間財・サービスの計算は不要)。
次に経済成長(GDP成長)とは、製造するパンの数を増やすことだと捉えて頂きたい。
パンの数を増やすポイントは2つ。
GDP成長率=「労働人口の成長」×「労働生産性の成長」
パン工場の生産能力を高めるには、「従業員を増やすこと」および「社員教育や機械化やIT化等で従業員一人あたりの生産性を高めること」が重要な要素になるということです。
この単純化したパン工場モデルから、アベノミクスの成長戦略の目標、GDPを500兆円から600兆円にする(パンを500個つくる国から600個つくる国にする)ため、なぜ主婦や高齢者や外国人の労働市場への参加を促しているのか、IOTや人工知能等の技術革命を促す規制緩和等(あまりできてないが…)の位置づけも理解しやすくなるかと思います。
GDP=パンの生産数
GDP成長=パンの生産数を増やす
パンの生産数が増えれば、従業員の給与も増え、飢えや貧困もなくなり豊かになる。よって「経済成長=善」だという側面がある一方で、パンの製造工場をガンフル稼働させると排出ガス等で環境に良くなかったり、パン工場の経営の差が格差社会を生み出したりする負の側面もあります。経済政策においては、そのあたりのバランスがとても難しいことろです。
こんなイメージを持って、GDP関連記事を見てみると面白いかと思います。
次回はこの生産したパンを誰が買って食べるのか(支出面)?とか、
パンの売上をどのように分けるか(分配面)?という観点から、
その昔に学校で習ったであろう「GDPの三面等価の原則」を意識しながら、解説してみたいと思います。
それではまた!!