残念な話ではあるのですが、コロナショック後の世界株式市場の上昇局面も約1年になり、昨今、投資信託の利益確定売りをする投資家が多いように感じます(弊社でもわずかですがそのような動きが見られます)。
バリューマネジメントが提唱する長期投資の仕組みは、日々や単月や単年度の市場価格の上下変動を受け入れ、投資信託(ファンド)という箱の中で、税効果の高い複利運用を行い、長期的に資産を増加させるシステマティックなものです。
その仕組みの中で「優れた運用会社に活躍してもらいましょう!」と、彼らを信頼し長期的に資金を預けてくれた投資家の皆様の運用実績は、おそらく一般の投資家の想像を超えるものであることを(もちろん良い意味で)、弊社は商品選定を行うゲートキーパーとして、また個々のお客様の投資をサポートするファイナンシャルアドバイザーの立場から長年見てまいりました。
優れた運用会社が運用する投資信託の基準価格(設定当初は1万円)は、長年の運用実績と共に上昇し1万円から2万円(2倍)、3万円(3倍)、中には10万円(10倍)を超えるものまで存在します。しかし運用実績が良い投資信託の大半が、基準価格が上がれば上がるほど投資家に売却され残高の減少に見舞われてきました。
日本において優れた運用チームが、このような状況に陥るのを私は30年以上にわたって見てきました。改めてこの国の運用環境は、豊かさを生み出さない土壌であることを痛感します。いい仕事をすればするほど、資金を引き揚げられてしまった運用チームにも、いつもすまないなーという気持ちがなくなることは今だありません。
この1年の投資信託の売買動向をみても、昨年3月のコロナショック時には、まだまだ下がりそうなので売却したいと考えたり(そして実際、売却してしまったり)、そして1年後の今もまた、そろそろ下がるかもしれないので、このへんで利益確定をしたいと考えたり(やはり実際に売却してしまったり)するケースが結構あります。
当初は長い人生を豊かにするために10年、20年単位の投資を考えていたのに、たった1年の間に長期投資マインドを失ってしまう。このような事例はコロナが生み出した特別なケースではなく、その前の米中貿易摩擦、英国のEU離脱、とにかく何かしら世の中のイベントが起きる度に、私たちファイナンシャルアドバイザーが直面してきた問題です。
そして、その度に下記のようなことを何度もお伝えしています。
「短期の価格変動ではなく、長期的な資産成長に目を向けましょう!」
「当初の運用計画をしっかり守りましょう!」
「我々が選んだ運用チームがマーケットが下がっている時にも、将来を見据え優れた会社に投資をしてくれることを信じましょう、そして託しましょう!(それが投資信託の意味)」
「理由もなく頑張って運用成績を上げてくれている運用チームを解雇してはなりません!」(投資信託の基準価格が上がっているという理由だけで売却するというのはそういうこと)
このようなアドバイスにしたがって、長期投資マインドを堅持してくださったお客様には、「マーケットの成長+運用会社のスキルが生み出すアルファ」が、運用実績としてもれなく提供されてきました。
一方で、途中の短期変動が気になり売却してしまったお客様が、その後タイミングよくマーケットに復帰してきた事例を私たちは見たことがありません。
厳しい言い方かもしれませんが、短期の価格変動にばかり目がいく人は、目の前で見えていることしか見えない、信じないというマインドや習慣があるように感じます。
一方で長期投資を実践できる人は、一度決めたことを守り抜く精神力や、未来に対する想像力を有しているように感じます。個別の株式投資におきかえても「今はこの会社はピンチだけど将来はきっと良くなる」そんな想像力を発揮しなければ、本当の意味で安い価格で良い会社を買うことはできません。
個人的なことで恐縮ですが、いつ頃からか私自身、短期的な証券取引を一切やらなくなりました。短期取引は自分の利益の反対側に損失を被る人がいて、それがイコールで結びついているからです。要するに自分の幸福=他人の不幸という図式。
それに対して長期投資の成功は投資した会社の「成長の果実」を、株主・社員・取引先・地域・社会で分配(シェア)していくこと意味します。まさしく株式がイギリス英語でシェア(share)と呼ばれる所以です。
投資信託においても、私たちは良い運用会社をラインナップしつつ、お客様の人生設計や財政状況を考慮して長期投資計画を立てます。
お客様とファイナンシャルアドバイザーと運用会社。その三位一体のチームプレーが長期投資を成功に導くためにもっとも重要だと私は考えます。
お客様にも、投資ポートフォリオの運営管理の先に、私たちのようなファイナンシャルアドバイザーや運用チームがいるという想像力を持って頂けるとうれしいです。これは私たちの努力を理解してほしいから言っているのではなく、それを理解することがお客様自身の長期投資の成功確率をあげていくことになっていくから、敢えてお話しをしているのです。
日本の投資の土壌に「長期視点」と「信頼のネットワーク」を根付かせたい。現実はそれとは逆の力がITの便利さによって増幅しているように感じますが、バリューマネジメントは地道に諦めずに進んでいきたいと思います。
そして何だか突然ですが…(笑)、私たちの投資コンセプトにご賛同を頂いております弊社のお客様に、この場を借りて改めて御礼を申し上げます。
長期の視点を持ってバリューマネジメントと弊社パートナーの運用チームを信頼して頂き、いつも本当にありがとうございます。
これからも何卒よろしくお願い申し上げます!!