GDP考察(第二回)

2017.06.20(TUE)

さて、今回も引き続きGDPについて解説致します。

その前に前回の内容を簡単にまとめると…、

(要約)
・GDPを深く知ることは、「経済を観る眼を養うこと」につながる。
・また同時に「長期投資への理解度を深めること」に役立つ。
・GDPは、例えるなら「パンの生産数」。
・GDP成長とは、「パンの生産数を増やすこと」。
・パンの生産数の増加=「労働人口の増加」×「労働生産性の向上」。

改めて以上の点を頭に入れたうえで、GDP考察(第二回)をお読みください!

【第二回】
日本のGDP(1年間の付加価値合計)は約500兆円。

前回はGDPをパン500個の生産に例え、GDPを生産面(供給サイド)から捉えましたが、次に、生産に関わった方々にパンの売上金を「分配」してみましょう。

その関係者は誰か(生産要素という)というと…、

① パン工場で働いている人(社員)
② パン工場を経営している会社(経営者・株主)、
③ (人ではないが…)パン工場の建物やパン製造器などの設備
④ パン工場に操業許可を与えている政府(国・地方公共団体)

GDP(1年に創出された付加価値合計)は、上記①~④に分配されます。

GDP約500兆円(分配面)=①+②+③+④

経済の専門用語を使い、併せて数字も見てみると…

① 雇用者報酬(約260兆円)=社員の給与・報酬(所得税含む)
② 営業余剰(約100兆円)=企業利益…経営者・株主の取り分(法人税含む)
③ 固定資本減耗(約100兆円)=生産設備・建物の減価償却費
④ 間接税等(約40兆円)=消費税、関税、固定資産税等

上記の数字は、かなりアバウトではあるのですが、日本のGDPは、第一ステップとして、50%が社員の給与、20%が経営者と株主への配分、20%が設備・建物に、10%が税金(政府)に分配されていると理解しておけば、全体感を捉えることができるでしょう。

※実際はその後、第二ステップとして雇用者報酬から所得税・住民税、営業余剰から法人税等が引かれるので、政府部門の取り分はもっと大きくなります。

さらにGDPには3つの目の側面があります。生産され、分配されたお金を、最終的に何に使うか?という「支出面」です。支出面から見たGDPの公式は、数字の集計も比較的にしやすいことから、最もポピュラーです。

GDP約500兆円(支出面)=(C+I+G)+(X‐M)

C=個人消費(約300兆円)
I=企業投資(約80兆円)
G=政府支出(約120兆円)
X=輸出(約88兆円)
M=輸入(約83兆円)

実際には、その他、住宅投資(約16兆円)、在庫変動の数字等も入ってきますが、シンプルに考えれば、この公式でOKです。

(C+I+G)が内需の強さ、(X―M)は外需の強さを反映します。ちなみに生産面=供給サイドに対して、支出面=需要サイドといえます。物価はこの需要と供給の綱引きで決まります(需給バランス)。日本は長年、供給が需要を上回る「需給ギャップ」が解消できず、デフレから脱却できていません。

さて、この公式から個人消費が伸び、企業の設備投資が増加し、公共投資を増やせばGDPは増加することがわかります。また輸出が輸入より増加すれば(貿易黒字が増加)、これもGDPの増加要因となることが理解できるでしょう。

しかしここで大切なのは、GDPは一定期間のフロー(個人で言えば年収、企業なら売上)の概念であるということの認識です。

個人や企業や政府がガンガン借金をして、無駄な消費や投資を増やしたとしても、一時的にはGDPは増加します(GDPは一定期間の量を測るだけで、質を問いません)。

しかし一方で当然そんなことをすれば、個人(家計)、企業、政府の各経済主体の資産内容は悪化します。資産内容の悪化が一線を超えると、借金の返済が最優先になり、消費や投資を控えるようになり、深刻な不況に陥ります。

これを「バランスシート不況」と呼びます。

1990年バブル崩壊後の日本、リーマンショック後の世界経済が、まさしくそうです。そして近年GDPを急成長させてきた中国で、バランスシート不況のリスクが高まっているのかもしれません。

このようにGDPは「生産面」、「分配面」、「支出面」から測定することができ、どの側面から計算してもGDPの数字は一致します。それをGDPの「三面等価の原則」と言います

新聞報道等では、GDPを支出面から捉えることが多いです。時々、他の側面から見ることもありますが、GDPの基本フレームワークを知っておくことで、今まで以上に経済情報の理解度も深まるかと思います。

ただ四半期や1年のGDPの変動や、それによって上下変動する株価・金利・為替等に、長期投資家が一喜一憂することは全くありません。

日本だけでなく、グローバルかつ長期的な視点に立てば、1900年~2000年の人口爆発の世紀ほどでないにしろ、今後も新興国を中心に労働人口は増加しますし、人工知能やロボット等による労働生産性の向上も見込めます。要するに世界のGDPはまだまだ成長余地があるいうことです。

GDPの成長パターンも変化しそうです。世界中でお金の使い方(支出)は「モノからサービスへ」。また21世紀は、20世紀よりも一人当たりの人生の時間が長くなってきます。このあたりをビジネスチャンスにする企業が今後も活躍するでしょう。過去とは異なるパターンでGDPが成長する中で、それを機会に変える企業にしっかり長期投資をしたいものです。

そのためにも弊社ファイナンシャル・アドバイザーは、常に経済を観る眼を鍛え、皆様の資産価値向上に貢献してまいりたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます!

それにしてもGDPだけで、こんなに長い文章になってしまいました。
すみませんでしたー(笑)。

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