時代は二極化を超え、一握りの勝者が総取りする時代に入ったように見えます。
2月11日付の日経新聞「米S&P500、初の5000突破」という記事によると、時価総額が1000億ドル(日本円で約15兆円)超の米国企業は2/6時点で94社あり、それらの時価総額は2023年12月末比で約1割増加しました。一方で同期間、時価総額1000億ドル以下の企業群の時価総額は増えておらず、一握りの大型株が米国株全体を牽引している様子が見てとれます。
そのような状況下、2月21日に今最も注目されている米半導体大手エヌビディアが、市場予想を大きく上回る好決算を発表しました。昨年からの生成AIブームで、AI用半導体シェア8割の同社は「1強」の存在となり、株価は年初から約6割上昇、時価総額も2兆ドルを超えてきました。ちなみに2兆ドル超はアップル、マイクロソフトに次ぐ3社目。現時点で3社の時価総額合計は約8兆ドル(日本円で約1200兆円)にものぼります。
エヌビディアの好決算が波及し、翌日2月22日に日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新しました(1989年12月末以来)。1990年4月に野村證券に入社した我が身としては、かなり感慨深い感情が込み上げるかとも思いましたが、実は全く高揚感はなかったです(苦笑)。
正直なところ、日経平均株価の中身も当時と随分変わっていますし、日経平均株価は歴史的に日本株式市場の象徴ではありますが、日本企業全体を表している指数ではないと認識していると同時に、最高値を更新したといっても日本企業全体の時価総額は943兆円、その額は「マイクロソフト、アップル、エヌビディア」米国のたった3社の時価総額合計(約1200兆円)に全く及ばない現状があるからだと思います。
さてこのような「一握りの勝者による総取り」の流れは、株式市場だけでなく様々なシーンで加速しているように見えます。例えばスポーツ界。メジャーリーガー大谷翔平選手の年棒は、日本一年棒総額が高いソフトバンクホークスの全選手(支配下選手は70名上限)の2倍以上です。
もちろんエヌビディアも大谷選手も努力と実績を積み重ねてきた素晴らしい企業であり選手であることは解っています。しかしそこにお金(投資マネー)が一極集中する流れは、来るところまで来ているように個人的には感じています。
(バブル崩壊前の日本で、皇居の土地の時価で、カリフォルニア州全体が買えると言われていた時代のことを思い出します。)
現状を踏まえ、中浜の長期視点で投資ポートフォリオを考えるなら、今は「一握りの勝者」に投資を増やすことは避けたいと思います。それよりは、今はまだ注目されていない数多くの企業に目を向け、5年後、10年後の勝者候補に分散投資を行い、幅広いレンジでα(アルファ=超過収益)を獲得することを基本戦略にしたいです。この投資戦略はリスク管理面からも悪くないと思いますし、金融市場は長い目で見ると調整機能を発揮し、個々の企業の株価はあるべき価値評価のレンジに落ちつくという王道の考え方に基づきます。また世界経済のモデルは「大恐竜時代から多種多様な小型哺乳類時代へ移行する」という中浜個人の歴史観(期待感含む)も多少あります(笑)。
最後に米国大統領選挙に対する個人的な仮説ですが、米国は株式市場だけでなく、一般社会も二極化を超え、勝者総取り社会に突入しつつあるのではないでしょうか。その結果、多くの米国国民が敗北感を感じ(一見成功しているように見えている人たちでさえ)、社会に対する不満が充満するような状況が生み出されていると推測します。そして、それこそがトランプ元大統領の強さの背景にあるもののような気がしてなりません。
トランプ支持者にとって、Make America Great Againは自分が「敗者から勝者に変わる魔法の言葉」なのでしょう。