読書をして、徒然なるままに思う事

2025.04.27(SUN)

自分とは異なる情報や知識や経験を有する古今東西の人たちの考え方(世界観)に、書籍を通じて触れること。それは単純に楽しいことでもありますし、自分自身の仕事や人生に新たな視点を与えてくれます。

そういった意味でジャンルを問わず読書は人生を豊かにしてくれます。

私も月平均で1冊~2冊くらいは新しい本を読んでいる感じですが、最近では、先日残念ながらお亡くなりになった経済アナリスト森永卓郎さんの遺作「保身の経済学」を読みました。今まで、森永さんの本を読んだことはなかったのですが、ザイム真理教などのワードが最近注目のトピックになっており、一度読んでみたいと思ったからです。

保身とは「本質を追求するのではなく、目先の問題が発生しないようトラブル回避に専念すること」

その保身が社会の様々な分野で蔓延し、現在進行形で拡大していることこそが日本経済低迷の原因。そのように森永さんは喝破しています。そして各分野で起きている保身行動を具体的に列挙し、それらの解決策を独自の視点から提示しているのが「保身の経済学」です。

森永さん自身が世の中の本質と向き合い、様々な分野で起きている保身行動を分析する観察眼は鋭く、それらに対する解決策の提示も流石だと思いました。

一方で私自身の専門分野である資産運用の分野については、この場で何が正しくて誤っているかの言及はしませんが、ご自身の体験に引っ張られすぎて、金融の悪い側面にフォーカスし過ぎ偏った見方をされていると感じました。全体としては7割くらい森永さんの意見に賛同で、3割くらい反対かなというのが私の率直な読後感想です。

しかし保身が蔓延して本質を追求することなく小手先の対処を繰り返すことで、時間の経過と共に日本社会の活気が失われつつある現実の捉え方には私も100%同意です。

人口減少や少子高齢化などの外部環境の変化が、日本の本当の危機ではないと私は思います。それよりも外部環境の変化に対して、マインド(内部環境)が保身に浸食され、自分だけの短期利益に流される人々(=何とか自分だけは逃げ切りたいと願う人々)が増えたこと、長期視点で挑戦する気概を失っていることこそが大問題なのだと思います。

企業経営の世界でも同様の現象が起きていると感じます。インターネットの出現以来、創業から短期間で成功する企業が増えました。それに連れ、M&AやIPOで早めにイグジットして悠々自適な生活を送りたいといった感じで、会社を自己実現の道具としか見ていない経営者も増えた気がします。

一方で当社が企業型確定拠出年金(DC)の導入コンサルティングを通じて出会った経営者の皆さま方は、社員を大切にして、会社の長期利益の実現に挑戦しています。このような経営者の皆さまの姿勢に、私自身は日本経済の光明を見ている気がします。

経営学者の楠木健氏は、自身の著書の中で「長期利益の追求こそが会社(および経営者)の役割」と、企業経営の本質を喝破しました。長期利益の成長こそが、社会全体や会社のステークホルダーに対して本当の付加価値を生み出すのです。

資産運用についても同様のことがいえると私は考えます。長期的に利益をあげる会社に、長期的に投資をすること。その見極めができる運用会社(運用チーム)に銘柄選択を信じて託すこと。それが当社の長期投資戦略の肝です。外部環境が変化しても、本質を見つめ信じて託す気概があるかどうかを常に長期投資家は試されます。今もまさにそんな時期かもしれません。

また昨今、デジタル社会が進展して0と1で全ての情報処理をするせいか、世の中何でも「白か黒かの二択」という感じがしますが、読書などを通じて深く物事を突き詰めていくと、白と黒の間にも様々な色があることに思いが至ります。多種多様な色があることを前提に、適切な色を選択して「あるべき理想の絵(組み合わせ)」を描こうと努力するのが、本来の民主主義であり政府の役割なのだと思います。

米国で第二次トランプ政権が発足して約3カ月が経過していますが、「短期思考」と「白か黒かの単純化」が米国発で世界中に増殖しているようにも見えます。現在の大きな潮流に流されることなく、各分野で本質の探究をしている方々と共に頑張っていかなくてはなと・・・、日曜日の昼間、読書をしながら徒然なるままに思った次第です。

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