マーケットレビュー(2018年12月)

2019.01.11(FRI)

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします!


2019年の実質仕事始めの今週ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
インフルエンザも流行ってきていますので、健康にはくれぐれも気をつけてください。

さて当ブログでは、毎月のマーケットレビューを行ってきましたが

誠に勝手ながら、今年から四半期ごとにしたいと思います。

理由としては、昨年末に2018年の月次レビューを全て読み返してみたのですが、自分で言うのも何ですが、内容自体は悪くないと思う反面、月次だとどうしても短期変動に関する情報に着目する感じになってしまうからです。

私と致しましては、お客様の長期投資をサポートする一環としてブログを書いていますので、月次の短期変動にバイアスがかかってしまうのは趣旨に反します。

よって長期投資に役立つマーケット情報については、月次ではなく四半期の塊で捉え、その中で、より長期的な視点にたった経済や金融のトレンドをお伝えできればと考えた次第です。

今後はマーケットレビューを減らした分、長期投資に関する様々な視点からの個人的オピニオンや少しゆるめのネタ話を充実させてまいります(笑)ので、今後とも「長期投資の視点」を宜しくお願いいたします。

というわけで今回、月次では最後になりますが昨年12月のマーケットレビューをさせて頂きます。

【マーケットコメント】

2018
10月に大幅下落を記録した世界株式指数(MSCIAC)でしたが、翌月は多少落ち着きました。しかし先月12月改めて大きな下落に見舞われることになり、結局10月~12月の四半期で見ると世界株式指数(MSCIAC)はドルベースで12.8%下落。円ドルレートが同期間で3.5%円高に振れたことから、円ベースでは約16%程度下落したことになります。

12月のクリスマス商戦の時期に株式市場が暴落するのは大変珍しいケースですが、125日に中国の通信機器最大手ファーウェイの経営幹部が逮捕されたことで米中の対立が激化し、マーケットのセンチメントは急速に悪化していきました。

2018年の世界株式市場を時系列の流れで見ると…、

年初1月は世界同時好景気を背景に世界株式市場は上昇。

翌月2月に米国の労働賃金が上昇し、それに伴い債券市場で金利も急上昇。多額のドル建て負債を抱える新興国の経済危機が顕在化し、新興国株式を中心に世界株式市場はリスクオフの展開になりました。

3月にはトランプ米大統領が、「鉄鋼・アルミの輸入制限を発動すること」及び「知的財産の侵害を理由に対中制裁となる関税を課すこと」を表明。

その後6月から夏場にかけて、実際に関税の引き上げに動きました。

関税引き上げの影響で、世界経済全体が徐々に減速する間においても、米国経済はトランプ政権の減税政策と財税政策が効いて、独り勝ち状態は続きました。

しかし残念ながら、トランプ大統領の対外的な強硬政策は今、ブーメランとなって米国経済に少しずつダメージを与えつつあります。勝者なき貿易戦争(すでに貿易の域を超えた米中冷戦ともいえる)が、2019年以降の世界経済に与える影響をマーケットは危惧していると言えるでしょう。

11月には米国で中間選挙が実施され、下院を民主党が制し、いわゆる上院は共和党、下院は民主党のねじれ議会となり、これからはトランプ大統領の思うままにはいかない状況になりました。12月は早速、メキシコ国境の壁の建設の予算を巡って与野党が対立、予算が決まらず政府部門の一部閉鎖が12月末から今まで続いています。

このように米国そのものが分裂状態で、政権もあらゆる面でコントロール不能な状況になり、そのことが米国経済の先行き懸念につながっているわけですが、FRB12月に今年4回目の利上げを断行。ちょっとKYな感じのパウエル議長のタカ派的発言が、12月の株式市場の大きな下落につながりました。やはりFRB議長には頭の良さだけでなくセンスが必要不可欠のようです。

欧州では、経済的には中国の景気減速の影響を受け勢いを失い、政治的にはドイツでメルケル首相、フランスでマクロン大統領は政治的な力を失い、英国のEU離脱が合意なきものとなるリスクが高まっています。

一方で、世界経済また企業収益について冷静に見ると、全体として減速感こそあれ、そこまで悪いという状況ではありません。しかし、とにかく先行き不安によるマーケットの激しい変動そのものが、AIやロボットの自動取引を誘引し、その影響もあって、株価の変動がさらに大きくなっているのが現状です。
2017年~18年の年末年始は上げのペースが行き過ぎだと感じましたが、2018年~19年の状況は全くその反対だと感じます。

「割高な株価が好調な企業業績への期待によって正当化されてきた1年前の状況」が終わり、「先行き不安が割安な株価を正当化している現在」ですが、個人的にはおそらくどちらも正しくないのだろうと思います。

いつの時代も、常に激しい変動の時こそ、物事の中心(本質)を見る目利き力が試されます。
職業人として身が引き締まる2019年です。

【金融市場の動き】

(12月末の長期金利) 

リスクオフで先進国の10年国債利回りは急低下。日本の10年国債が再度マイナスゾーンに突入したことの意味をどう解釈するか、そこが今後の日本の金融市場を占うポイントかもしれません。

世界の長期金利
12
前月比
年初来
日本10年国債
-0.01%
-0.10%
-0.06%
米国10年国債
2.69%
-0.30%
0.29%
ドイツ10年国債
0.24%
-0.07%
-0.19%
英国10年国債
1.26%
-0.08%
0.08%



(12月末の日本株式)
1ヵ月で約1割下がり、日本株全体を示す東証株価指数(TOPIX)は年間で約18%下落。PER(株価収益率)10倍、PBR(株価純資産倍率)1倍という日本株のバリューは、1年後に振り返った時、それが正当だったのかどうか興味深いところです。
国内株式
12
前月比
年初来
日経平均株価
20014.77
-10.5%
-12.1%
TOPIX
1494.09
-10.4%
-17.8%
ジャスダック平均
3210.13
-10.2%
-18.7%
東証REIT指数
1774.06
-2.4%
6.7%

(12月末の先進国株式)
米国1強の2018年だったはずが、12月の一ヵ月で吹き飛んだ感じです。米国株式について言えば、年間を通じて一桁台のマイナスは珍しいことではありませんが、高値からの下落率と、その下落のスピードに関しては、よくある話ではありません。欧州株式は散々な1年でしたが、現在配当利回りが4%~5%程度になってきていますので、バリューの尺度では面白いところにきているように感じます。
海外先進国株式
12
前月比
年初来
NYダウ工業30種
23327.46
-8.7%
-5.6%
S&P500
2506.85
-9.2%
-6.2%
ナスダック
6635.28
-9.5%
-3.9%
FTSE100
6728.13
-3.6%
-12.5%
DAX
10558.96
-6.2%
-18.3%
香港ハンセン
25845.7
-2.5%
-13.6%
(12月末の新興国株式)
新興国は12月の下落率を見ると、先進国より低いことが見てとれます。米国の金利が下落したことで、新興国のマーケットが金融面から落ち着きを取り戻しつつあります。
海外新興国株式
12
前月比
年初来
上海総合
2493.90
-3.6%
-24.6%
インドSENSEX
36068.33
-0.3%
5.9%
ブラジルボベスパ
87887.26
-1.8%
15.0%
ロシアRTS
1066.13
-5.3%
-7.6%

(12月末の商品市況) 
原油価格はOPECの減産協調の効き目もなく、世界経済の先行き減速不安とシェールオイル等による供給過剰が懸念され大幅続落。金融市場のリスクオフで金価格上昇。
商品
12
前月比
年初来
原油WTI先物(ドル)
45.41
-10.8%
-24.8%
NY金先物(ドル)
1278.3
4.8%
-2.1%
CRB指数(ドル)
169.80
-6.6%
-12.4%

(12月末の為替市場)  黒字は円安、-赤字は円高
リスクオフの円高が復活。米ドル一強と言われた2018年の世界の中で、通貨円の強さが際立つが、アベノミクスで円安に振れた揺り戻しに過ぎないのかもしれない。とは言え3年連続の円高。2019年も円高が続けば4年連続になるので、そろそろかなあーという気がしなくともない。
為替
12
前月比
年初来
米ドル/
109.60
-3.4%
-2.8%
ユーロ/
125.62
-2.2%
-7.1%
英ポンド/
139.76
-3.4%
-8.1%
豪ドル/
77.22
-6.9%
-12.2%
NZドル/
73.55
-5.7%
-7.9%
カナダドル/
80.3
-6.0%
-10.4%
スイスフラン/
111.54
-1.8%
-3.6%
南アランド/
7.61
-7.0%
-16.7%

以上

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