最近の社会経済トレンドの一つとして「シェアリング・エコノミー」が挙げられますが、一般的には個人が保有する遊休資産の貸出しを仲介するサービスとして捉えられています(貸主は遊休資産の活用によって収入が得られ、借主は所有することなく利用できることがメリット)。
車の相乗りサービスを実現したウーバー・テクノロジーや保有する住宅や物件を宿泊施設として仲介するエアビーアンドビーが、シェアリング・エコノミーの代表企業として有名です。これらのサービス、誰にでも思いつきそうなものでありますが、従来は安全性や効率性の問題から実現することはできませんでした。しかし近年、ビッグデータの処理能力の向上、スマートフォンなどのIT端末の進化、ソーシャルメディアの発展による個人情報の整理等、テクノロジーが飛躍的に進化したことで現実のものとなっています。
このように脚光を集めるシェアリング・エコノミーですが、私は以前から究極のシェアリング・エコノミーは株式市場だと思っておりました。
世界で最初の株式会社は、1602年のオランダの東インド会社であることは有名な話です。当時のヨーロッパでは希少価値が高い香辛料を求め、多くの商人が産地のインド(現在の東南アジアあたり)まで航海をしていました。しかし航海は莫大な富を生み出す反面、船員の雇用、船の建造費等のコストも高く、また航海の途中で遭難や略奪にあうリスクもありました。冒険の規模が大きくなるにつれ、徐々にとても一人で背負うことはできなくなっていきました。そこで航海の出資者を募り、リターン(収益)-リスク(危険)-コスト(費用)を、出資の単位に応じて分かち合おうということになったのです。
こうして1602年の東インド会社誕生以後、社会経済の発展を支える仕組みとして、多くの株式会社が生まれ、やがて株式が市場で取引されるようになり、株式市場を形成していきました。
「みなさん、いかがでしょうか?」
株式市場の歴史を振り返ると、本来、株式市場に投資をするということの意味は、将来に挑戦する会社が生み出す期待リターン(収益)と変動リスク(不確実性)を分かち合うということだと思いませんか?
大切なことはリターンもリスクも公平に分かち合うということ。おそらく自分だけリスクを回避してリターンを得ようなどいうのは小賢しい考えなのでしょう。長い航海を信じて待つことが大切。船が波で揺れるたびに一喜一憂するようでは、長期投資家としては失格なのだと思います。
株式は英語でストック(stock)ですが、これは利益を貯蔵する機能を有する意味合いが強いのですが、一方で株式はシェア(share)とも呼ばれます(主に英国で)。こちらは東インド会社のリターンとリスクを分かち合うイメージです。個人的にはこのシェアという言葉が好きです(もちろん株式の価値の貯蔵機能も最重要なところではあるのですが…)。
何はともあれ「シェアをする心を持つこと」が大切。
長期投資の成功に限らず、それこそが人生に真の豊かさをもたらす秘訣なのではないかと思う、今日この頃であります。